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陽子線照射により生じる微弱光画像から、陽子線の飛程を高精度で計測することに成功 研究活動 | 研究/産学官連携

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Academic year: 2018

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(1)

陽子線照射により生じる微弱光画像から、陽子線の飛程を

高精度で計測することに成功

名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長:髙橋 雅英)医療技術学専攻

の山本 誠一 (やまもとせいいち) 教授、 小森 雅孝 (こもりまさたか) 准教

授、名古屋陽子線治療センターの歳藤 利行(としとうとしゆき)博士らの

研究グループは、名古屋陽子線治療センターの陽子線治療装置を用いて、

陽子線ビームを水に照射した際に発生する微弱光を画像化することで、陽

子線飛程を高精度で計測することに成功しました。

本研究グループは、陽子線が水中で微弱光を発することを発見し、この

光を高感度カメラで撮像することで陽子線が水に与える線量分布を画像化

することに世界で初めて成功しました。 また、 撮像した画像から、 陽子線の

飛程を高い精度で評価することもできました。従来、陽子線照射により水

が発光するとは考えられていなかったことから、陽子線照射中の線量分布

画像を光計測で得たという報告はありませんでした。今回の研究成果は、

新しい陽子線計測法の発見であり、 研究グループは、 検出した微弱光は、 陽

子線照射で水に生じたフリーラジカルに起因すると考えています。今回、

画像化に成功した手法は、陽子線照射中に画像化が可能であり、かつ高分

解能画像が得られることから、陽子線治療における線量評価や装置の精度

管理に大きく貢献することが期待されます。

この研究成果は、米国医学物理専門誌である Medical Physics(メディ

カル・フィジックス)のオンライン版に 10 月 16 日に掲載されました。

(2)

陽子線照射により生じる微弱光画像から、陽子線の飛程を高精度で計測することに成功

【ポイント】

名古屋大学大学院医学系研究科医療技術学専攻の山本誠一教授、小森雅孝准教授、名古屋 陽子線治療セ ンターの歳藤利行博士らの研究グループは、名古屋陽子線治療セ ンターの陽子 線治療装置を用いて、陽子線ビームを水に照射した際に発生する微弱光を画像化し、陽子線飛 程を高精度で計測することに成功しました。本研究グループは陽子線が水中で微弱光を発する ことを発見し 、この光を高感度カメラで撮像することで陽子線が水に与える線量分布を画像化す ることに成功しました。また、撮像した画像から、陽子線の飛程を高い精度で評価することができ ました。今回の手法は、陽子線照射中に画像化が可能であり、かつ高分解能画像が得られること から、陽子線治療における線量評価や装置の精度管理に大きく貢献することが期待されます。

【背景】

陽子線治療は、陽子線が選択的に高線量を腫瘍に与えることが可能なため、注目を集めてい ます。陽子線治療においては、間違いなく陽子線が目的とする部位に照射されていることを確 認するために、照射中あるいは照射直後に線量を測定したいという要求があります。現在は、 陽電子放射型断層撮像法(PET)を用いて、陽子線照射により生じた陽電子を、照射後に画像化 することで線量分布を得ることが試みられていますが、PET 装置は空間分解能が比較的低い(4- 5mm 程度)ことやコストが高い(数億円)上、照射中の線量分布と、発生する陽電子の分布が異な るという問題点がありました。また、陽子線照射中に線量を知ることができない問題点もありました。 一方で、陽子線照射により、水が発光するとは考えられていなかったことから、これまで陽子線照 射中の線量分布画像を光計測で得たという報告はありませんでした。

【研究の内容】

今回、山本教授らのグループは、世界で初めて、陽子線が水中で微弱光を発することを発見 し、この微弱光を高感度 CCD カメラで撮像することで陽子線が水に与える線量分布を画像化す ることに成功しました。本グループは、容器に封入した水に陽子線を照射した状態で、高感度 CCDカメラで容器中の水を撮像しました。その結果、陽子線によって水に生じる微弱光の分布 を鮮明に画像化することができました。(図-1(A))。また、画像から得られた陽子線の飛程の 形状は、明確なブラッグピークを有し、その飛程は電離箱を用いた測定値と一致しました(図 1(B))。今回の研究成果は、新しい陽子線計測法の発見といえるものであります。研究グルー プは、検出した微弱光は陽子線照射で水に生じたフリーラジカルに起因すると考えています。

(3)

A) (B

今回の研究で得られた水に 100.2MeV(左)の陽子線を照射したときの線量分布画像(オレンジ 色の部分)(A)と画像から得られた線量分布のプロファイル(B)

【成果の意義】

水は、人体を模擬する最良の物質で ありますが、今回の研究は、水そのものが陽子線の検出 器となりうる性質をもっていることを明らかにしました。今回実験に用いた手法は、陽子線照射中 に実時間で線量分布の画像化が可能であり、高い空間分解能の画像が得られることから、 陽子線治療における線量評価や装置の精度管理に大きく貢献するものと期待されます。

【用語説明】

陽子線治療:

陽子を加速し、患者の腫瘍に照射することで治療を行う放射線治療の一種。線量を腫瘍に集 中して与えることができるため、治療効果が大きいと考えられている。

飛程:

陽子線などの 荷電放射線は、物質中でエネルギーを失いなが ら進み、一定の距離で止まる。この 距離のことを飛程という。陽子線では止まる直前で大きなエネルギーを物質に与える。

ブラッグピーク:

陽子線などの粒子線は物質中で止まる直前で大きなエネルギーを物質に与えるが、このエネルギ ーのピークをブラッグピークという。

フリーラジカル:

放射線などにより生じる反応性の高い分子でヒドロキシルラジカルなどがある。ラジカルは微弱光を 発することが報告されている。

【論文名】

雑誌名: Medical Physics(メディカル・フィジックス)(米国医学物理専門誌)

論 文 名 :" Luminescence imaging of water during proton-beam irradiation for range estimation "

著者:Seiichi Yamamoto, Toshiyuki Toshito, Satoshi Okumura, and Masataka Komori

(山本誠一、歳藤利行、奥村聡、小森雅孝)

参照

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